公園で遊んだ翌日、腕が大きく腫れ上がっていた。大人なら小さな赤みで済むところが、子どもだとこんなに腫れるのはなぜだろう。お子様の虫刺されは、大人とは反応の出方が違います。腫れが大きく、かゆみが長く続き、しかもかき壊してとびひになりやすい。「たかが虫刺され」と思っていたものが、思わぬ広がり方をすることがあります。一方で、対策ははっきりしています。刺されないようにすることと、刺されたら早く炎症を抑えることです。このページでは、お子様の虫刺されについて、原因と対処、受診の目安をご説明します。

子どもの虫刺されの特徴
虫に刺されたときの反応は、虫の唾液や毒に対するアレルギー反応です。そして、この反応の出方は年齢によって変わります。
乳幼児期(おおむね1〜2歳から学童期)
- 遅延型反応が強く出る時期です
- 刺された翌日以降に、赤く大きく腫れ、かゆみが強く出ます
- 腫れが数日から1週間以上続くことがあります
- 水ぶくれになることもあります
大人
- 刺された直後に赤くかゆくなり、数時間で治まる(即時型反応が中心)
- 遅延型の反応は弱くなっていきます
つまり、同じ虫に刺されても、お子様のほうが大きく腫れて長引くのは、体の反応の仕方が違うためです。「うちの子だけひどく腫れる」のは、体質というより年齢によるものであることが多いのです。
なお、乳児期(生後まもなく)はまだ反応が弱く、初めて刺されたときには反応が出ないこともあります。刺される経験を重ねるうちに、反応が強くなっていきます。
主な原因となる虫
蚊
最も多い原因です。屋外はもちろん、室内でも刺されます。
ブユ(ブヨ・ブト)
渓流や高原、キャンプ場などに多く、皮膚をかみ切って吸血します。強い腫れと痛み、強いかゆみが特徴で、長引きやすい虫です。
アブ
刺されると痛みが強く、大きく腫れます。
ハチ
刺された直後に強い痛みと腫れ。アナフィラキシーに注意が必要です(後述)。
毛虫(チャドクガなど)
直接触れなくても、風で飛んだ毒針毛が皮膚に付くだけで、細かいブツブツが多数でき、非常に強いかゆみが出ます。ツバキ・サザンカの木の近くで起こりやすいのが特徴です。
ダニ(イエダニ・マダニ)
イエダニは、おなかや太ももなど衣類で覆われた柔らかい部分を刺します。マダニは草むらに多く、皮膚に食いついたまま離れないことがあります。
ノミ
足首やすねに多く刺されます。
トコジラミ(南京虫)
夜間に刺され、露出部に複数並んで刺されることがあります。
危険なサイン(すぐに救急要請が必要な場合)
多くの虫刺されは心配のないものですが、次の症状があれば、**ただちに救急要請(119番)**をしてください。
- 呼吸が苦しそう、ゼーゼーする、声がかすれる
- 全身にじんましんが出る
- 繰り返し吐く、強い腹痛
- 顔色が悪い、ぐったりする、意識がはっきりしない
- 唇や顔が大きく腫れる
これらはアナフィラキシーのサインで、ハチに刺された場合にとくに注意が必要です。ハチに刺された経験のあるお子様が再度刺された場合は、より慎重に様子を見てください。
受診の目安
腫れが強い、広い範囲に広がっている
かゆみが強く、かき壊している
じくじくしている、黄色いかさぶたが付いている(とびひの可能性)
赤く腫れて熱を持ち、痛みが強い(細菌感染の可能性)
水ぶくれができている
数日たっても良くならない、悪化している
マダニが皮膚に食いついている(自分で取らずに受診してください)
発熱をともなう
毛虫に触れた・木の下を通った後に、細かいブツブツが多数出た
ハチに刺された
マダニについては、無理に引き抜くと口の部分が皮膚に残ったり、病原体を注入してしまったりすることがあります。 医療機関で処置を受けてください。また、マダニに咬まれた後、数日から2週間ほどの間に発熱や発疹が出た場合は、必ず受診してください。
早めに治療する意味
かき壊しから、とびひになります。
お子様の虫刺されで最も多い問題がこれです。かゆみが強いため、寝ている間にもかいてしまい、傷ついた部分から細菌が入ってとびひ(伝染性膿痂疹)を起こします。夏場、あっという間に全身へ広がることがあります。
跡が残ることがあります。
かき壊しをくり返すと、色素沈着が長く残ったり、硬いしこり(結節性痒疹)になったりすることがあります。とくに脚の虫刺され跡は、何年も残ることがあります。
炎症が深く広がることがあります。
細菌感染が進むと、蜂窩織炎など、抗菌薬の内服が必要な状態になることがあります。
「早くかゆみを止める」ことが、すべての予防になります。 市販薬で様子を見て数日たってから受診されるより、腫れが強い段階で適切な薬を使うほうが、結果的に治りが早く、跡も残りにくくなります。
なお、経過や治療への反応には個人差があります。
当院の虫刺され診療の特徴
虫刺されは、塗り薬による治療(保険診療)が基本です。川名ごとう皮フ科クリニックでは、まず保険診療でできる治療をしっかり行うことを土台に、かき壊しと跡を防ぐことを大切にしています。
皮膚科専門医による診療
当院の院長・後藤克修は、日本皮膚科学会が認定する皮膚科専門医です。虫刺されは、刺した虫の種類や、とびひなどの二次的な変化によって対応が変わるため、状態を見極めてから治療方針を決めることを大切にしています。
「かゆみを早く止める」ことを優先する
虫刺されの診療で当院が最も重視しているのは、かゆみを早く、しっかり止めることです。
「かかないでね」とお子様に言っても、寝ている間にはかいてしまいます。ですから、かゆくない状態に早く戻してあげるほうが確実です。市販薬でしのぐより、症状に合った強さの薬を短期間しっかり使うほうが、結果的に薬を使う総量も少なくすみ、跡も残りにくくなります。
また、とびひになっていないかの見極めも大切にしています。じくじくして黄色いかさぶたが付いていれば、それはもう虫刺されではなく感染症です。抗菌薬による治療が必要になります。
そして、跡を残さないためのケアについてもお伝えします。虫刺され跡の色素沈着は、日焼けで濃くなります。夏場の脚は特に日光に当たりやすく、対策の有無で数年後が変わってきます。
通いやすい体制
所在地は名古屋市昭和区折戸町で、地下鉄鶴舞線「川名駅」から徒歩10分ほど、屋根付きの駐車場を14台分ご用意しています。院内にはキッズコーナーや多目的トイレを設け、お子様連れのご家族が来院しやすい環境づくりを心がけています。
診療の流れ(初診〜)

受付・問診
問診票に、いつ・どこで刺されたか(屋外・室内、山や川など)、心当たりのある虫、症状の経過、これまでのケア、既往歴、ハチに刺された経験の有無などをご記入いただきます。

診察
医師が皮膚の状態を直接診て、腫れの程度、水ぶくれや感染の有無を確認します。刺され方の分布(並んでいる、覆われた部分にある、など)も手がかりになります。

処置(必要に応じて)
マダニが食いついている場合は、その場で除去します。

治療方針のご説明
お薬の使い方と、かき壊しを防ぐ工夫、跡を残さないためのケアをご説明します。

経過の確認
必要に応じて再診します。
治療方法
外用薬
- ステロイド外用薬
炎症とかゆみをしずめる基本の治療です。腫れが強い場合は、しっかりした強さのものを短期間用いるほうが効果的です。部位と年齢に合わせて選びます - 抗菌薬の外用
とびひなど、細菌感染をともなう場合に用います
内服薬
- 抗ヒスタミン薬
かゆみが強い場合、全身に多数刺されている場合などに用います - 抗菌薬
細菌感染が広がっている場合に用います
処置
- マダニの除去
専用の器具で、口の部分を残さないよう除去します - 毛虫の毒針毛への対応
粘着テープで毒針毛を取り除いてから治療します。こすると広がるため、自己処置は避けてください
跡への対応
色素沈着が残っている場合、紫外線対策と保湿を続けることが基本になります。状態によっては、ほかの選択肢をご案内する場合もあります。
ご家庭でのケア・予防
刺されたときの対応
- 患部を水で洗い流す
- 冷やす 保冷剤や冷たいタオルで冷やすと、かゆみと腫れが和らぎます
- 処方された薬を塗る
- かかせない工夫 絆創膏やガーゼで覆う、爪を短く整える
やってはいけないこと
- かき壊す 最も避けたいことです
- つぶす・引っかく
- 毛虫の場合、こすったり洗いすぎたりする 毒針毛が広がります。粘着テープで取ってから、流水で洗い流してください
- マダニを自分で引き抜く 医療機関で処置を受けてください
予防
服装
- 屋外では、長袖・長ズボン、明るい色の服(暗い色は虫を引き寄せやすいとされます)
- サンダルより靴と靴下
- 草むらに入るときは、裾を靴下に入れる
虫よけ剤
- 年齢に応じた製品を選び、使用回数の目安を守ってください
- ディートを含む製品は、年齢によって使用回数の目安が定められています
- イカリジンを含む製品は、年齢による使用制限がないものがあります
- 顔に使うときは、手に取ってから塗る。目や口のまわりは避ける
- 日焼け止めと併用する場合は、日焼け止めを先に塗ります
環境
- 網戸を確認する
- 家の周りの水たまりをなくす(蚊の発生源になります)
- 室内はこまめに掃除し、寝具を清潔に保つ(ダニ対策)
- ペットのノミ・ダニ対策
場所への注意
- ツバキ・サザンカの木の下(毛虫)
- 草むら(マダニ)
- 渓流・キャンプ場(ブユ)
跡を残さないために
- かき壊さない(最も重要)
- 日焼けを避ける 色素沈着は日光で濃くなります。夏場の脚は特に対策を
- 保湿を続ける
よくある質問
Q. なぜ子どもだけこんなに腫れるのですか?
-
A. お子様は、刺された翌日以降に強く反応する「遅延型」の反応が強く出る時期にあるためです。年齢とともに反応は弱まっていきます。体質が特別なわけではないことが多いので、ご心配は要りません。
Q. 市販の虫刺され薬でよいですか?
-
A. 軽いものであれば構いません。ただし、腫れが強い、かゆみが取れない、数日たっても良くならないという場合は、症状に合った強さの薬を使うほうが早く落ち着きます。だらだら使い続けるより、短期間しっかり治すほうが結果的に負担が少なくすみます。
Q. とびひになったかどうか、どう分かりますか?
-
A. かき壊した部分がじくじくして、黄色いかさぶたが付き、周囲に次々と広がっていくようなら、とびひの可能性があります。早めにご相談ください。
Q. 跡は消えますか?
-
A. 色素沈着は時間をかけて薄くなることが多いのですが、数か月から年単位かかることがあります。かき壊さないこと、日焼けを避けることが最大の対策です。硬いしこりになっている場合は、治療をご相談ください。
Q. 虫よけ剤は子どもに使って大丈夫ですか?
-
A. 年齢に応じた製品を選び、使用回数の目安を守れば使えます。成分によって年齢の制限が異なりますので、パッケージの表示をご確認ください。ご不明な点は診察時にお尋ねください。
Q. マダニが付いていました。取ってよいですか?
-
A. 無理に引き抜かないでください。 口の部分が皮膚に残ったり、病原体を注入してしまったりすることがあります。医療機関で処置を受けてください。また、咬まれた後、数日から2週間ほどの間に発熱や発疹が出た場合は必ず受診してください。
Q. 毛虫に触れてしまいました。
-
毒針毛が広がります。まず粘着テープで毒針毛を取り除き、その後流水で洗い流してください。着ていた衣類も、粘着テープで処理してから洗濯を。かゆみが強い場合は受診してください。
Q. 治療には保険が使えますか?
-
A. 虫刺されの診断・治療は保険診療の対象です。お住まいの自治体の医療費助成も適用されます。
Q. ハチに刺されたことがあります。次も心配です。
-
A. ハチに刺された経験のある方が再度刺された場合、より強い反応が出る可能性があります。刺された後は特に注意して様子を見て、呼吸が苦しい・全身にじんましんが出る・ぐったりするといった症状があれば、ただちに救急要請してください。ご不安な場合は診察時にご相談ください。
院長から患者様へ
皮膚は、体の状態を映す鏡だと、私は考えています。虫刺されは、体の免疫がどう反応しているかが、そのまま皮膚に表れるものです。お子様が大きく腫れるのは、体が一生懸命反応している証でもあります。
この症状で私が最も大切にしているのは、かゆみを早く止めることです。「虫刺されくらいで受診してよいのだろうか」と迷われる方は多いのですが、私はむしろ、早めに来ていただきたいと思っています。かゆみを我慢させると、寝ている間にかき壊し、そこからとびひになる。夏場、これで大変な思いをされるご家族をたくさん見てきました。数日のかゆみを抑えることが、その後の何週間かを変えます。
そしてもうひとつ、跡のこともお伝えしたいと思っています。脚の虫刺され跡が茶色く残って、何年も気にされている方は少なくありません。かき壊さないこと、日焼けを避けること。この2つを知っているかどうかで、数年後の肌が変わります。目の前のかゆみだけでなく、その先まで考えるのが皮膚科医の仕事だと思っています。
夏はお子様が外で思いきり遊ぶ季節です。虫に刺されるのは、その裏返しでもあります。だからこそ、刺された後をどう手当てするかを知っておいていただければ、安心して遊ばせてあげられるのではないかと思っています。
私自身、患者様とご家族のお話をしっかりうかがい、分かりやすくご説明し、納得していただいたうえで治療を進めることを信条としています。どうぞお気軽にご相談ください。
川名ごとう皮フ科クリニック 院長 後藤 克修
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