手のひらがいつも汗ばんでいて、紙がふやけてしまう。人前に出るとわきの汗が服にしみて、色の濃い服しか着られない。においが気になって、人との距離が気になる。汗やにおいのお悩みは、他人には見えにくく、相談しにくいものです。「体質だから仕方ない」「気にしすぎだ」と言われてしまい、ひとりで抱えてこられた方も少なくありません。しかし、多汗症もワキガ(腋臭症)も、医学的に対応できる症状です。保険診療で使える治療も広がっています。このページでは、汗とにおいの仕組みから、治療の選択肢までを、できるだけ分かりやすくご説明します。川名ごとう皮フ科クリニックでは、皮膚科専門医による診療で、こうしたお悩みに向き合ってまいります。
多汗症・ワキガとは
汗腺には2種類あります
汗を出す腺(汗腺)には、はたらきの異なる2種類があります。
エクリン汗腺
全身のほぼすべての皮膚にあり、体温調節のために汗を出します。この汗はほとんどが水分で、出た直後はにおいがありません。多汗症は、この汗の量が多い状態です。
アポクリン汗腺
わきの下、乳輪、外陰部などに限られた場所にあります。たんぱく質や脂質を含む汗を出し、これが皮膚の常在菌に分解されることで独特のにおいが生じます。**ワキガ(腋臭症)**は、このはたらきが関わるものです。
つまり、多汗症とワキガは別のものです。汗の量は多いがにおいは気にならない方、逆ににおいが気になるが汗の量は多くない方、両方ある方。いずれもいらっしゃいます。治療の方法も異なるため、まずどちらなのかを見極めることが大切です。
多汗症
体温調節に必要な量を超えて汗が出る状態です。

全身性多汗症
全身に汗が多いもの。甲状腺の病気、糖尿病、感染症、更年期、服用中の薬などが背景にあることがあり、その場合は原因への対応が必要です。
局所性多汗症
特定の部位に限って汗が多いもの。原因のはっきりしないもの(原発性局所多汗症)が大半で、次の部位に多くみられます。
- 手のひら(手掌多汗症)
- 足の裏(足底多汗症)
- わきの下(腋窩多汗症)
- 顔・頭(頭部顔面多汗症)
原発性局所多汗症は、思春期前後から始まることが多く、左右対称に症状が出るのが特徴です。緊張したときに強くなる一方、睡眠中は止まる傾向があります。体質的なもので、汗を出す神経のはたらきが過敏になっていると考えられています。
ワキガ(腋臭症)
わきの下のアポクリン汗腺のはたらきによって、独特のにおいが生じる状態です。思春期以降に目立ってくることが多く、体質的な要素が大きいとされています。
耳あかが湿っている方は、アポクリン汗腺のはたらきが活発な傾向があることが知られており、目安のひとつとされています。
なお、ご自身では強く感じていても、周囲はほとんど気づいていないという場合もあります。逆に、においを過剰に気にするあまり日常生活に支障が出ている状態(自己臭症)もあり、その場合は別の対応が必要になります。ご自身だけで判断せず、一度ご相談いただければと思います。
症状の目安・セルフチェック
多汗症
手のひらの汗で、紙が湿る・スマートフォンが反応しにくい
汗で握手をためらう
わきの汗が服にしみ、色の濃い服を選んでしまう
足の裏の汗で、靴下やサンダルが滑る
緊張する場面で、特に汗が増える
睡眠中は汗をかかない
思春期ごろから続いている
左右同じように症状がある
ワキガ
わきのにおいが気になる
衣類のわき部分が黄ばむ
耳あかが湿っている
ご家族に同じ体質の方がいる
これらに当てはまる場合、対応できる治療があります。「体質だから」とあきらめる前に、ご相談ください。
一方、急に汗が増えた、片側だけに症状がある、夜間にも大量の汗をかく、体重減少や動悸をともなうといった場合は、ほかの病気が背景にある可能性があります。この場合は原因を調べることが優先されます。
我慢を続けることの負担(早めのご相談の意味)
汗とにおいのお悩みは、命に関わるものではありません。しかし、日常生活の質に与える影響は決して小さくありません。
行動が制限されます
服の色を選ぶ、握手を避ける、人と距離を取る、電車のつり革につかまらない。こうした小さな回避が積み重なると、行動範囲そのものが狭くなっていきます。
進路や仕事に影響することがあります。
手のひらの汗で紙や機器が扱いにくい、接客業でにおいが気になる、といった理由で、やりたいことを避けてしまう方もいらっしゃいます。
皮膚のトラブルにつながることがあります。
汗による湿った環境は、あせも、水虫、いんきんたむし、かぶれの原因になります。制汗剤の使いすぎで皮膚が荒れることもあります。
ひとりで抱え込みやすい。
周囲に相談しにくく、「気にしすぎ」と言われて終わってしまうことも多いテーマです。だからこそ、医療機関でご相談いただく意味があると考えています。
現在は、保険診療で使える塗り薬が複数あり、症状によっては注射による治療も保険で受けられます。選択肢は以前より確実に広がっています。「病院に行くほどのことではない」と思わずに、一度ご相談ください。なお、経過や治療への反応には個人差があります。
当院の多汗症・ワキガ診療の特徴
多汗症・ワキガの治療は、症状によって保険診療で行えるものと、保険診療とは別のご案内(自費)となるものがあります。川名ごとう皮フ科クリニックでは、まず保険診療でできる治療を土台に、必要に応じて他の選択肢をご案内します。
皮膚科専門医による診療
当院の院長・後藤克修は、日本皮膚科学会が認定する皮膚科専門医です。多汗症とワキガは原因も治療も異なり、また背景に別の病気が隠れていることもあるため、まずどの状態なのかを見極めることを大切にしています。
相談しにくいことを、話しやすく
このお悩みで受診される方の多くが、長い間ひとりで悩んでこられています。「こんなことで受診してよいのだろうか」と迷いながら来られる方も少なくありません。当院では、まずそのお気持ちをうかがうところから始めます。どんな場面で困るのか、どのくらい生活に影響しているのか。症状の程度は、汗の量だけで決まるものではなく、その方の生活への影響で測るべきものだと考えています。
そのうえで、保険診療で使える塗り薬・飲み薬から順にご提案し、効き方を見ながら段階的に検討していきます。いきなり負担の大きい方法をおすすめすることはありません。また、汗のかき方には生活習慣や自律神経の状態が関わることもあるため、ご希望に応じて生活面のご相談も承ります。より専門的な治療が必要と判断した場合には、対応可能な医療機関へご紹介いたします。
通いやすい体制
所在地は名古屋市昭和区折戸町で、地下鉄鶴舞線「川名駅」から徒歩10分ほど、屋根付きの駐車場を14台分ご用意しています。院内にはキッズコーナーや多目的トイレを設け、お子様連れのご家族から大人の方まで、幅広い世代が通いやすい環境づくりを心がけています。
栄養・生活面のサポートも院内で(ご希望に応じて)
当院には管理栄養士が在籍し、ご希望に応じて、食事や生活面のご相談も同じ場所で受けていただけます。汗のにおいには、食生活が関わることがあると考えられています。これは、保険診療による標準的な治療を基本としたうえで、ご希望に応じてご案内している追加のサポートであり、標準治療に代わるものでも、効果を保証するものでもありません。なお、こうした栄養・生活面のサポートは、保険診療とは別のご案内(自費)となります。くわしくは診察時にご説明します。
診療の流れ(初診〜)
初めて受診される際の、大まかな流れをご説明します。実際の進め方は、症状や状態によって変わる場合があります。

受付・問診
ご来院後、問診票に、症状の始まった時期、部位、困っている場面、生活への影響、これまで試したこと、既往歴、服用中のお薬などをご記入いただきます。

診察
医師が皮膚の状態を直接診て、汗の分布や皮膚の様子を確認します。多汗症かワキガか、両方か、また背景に別の病気が疑われないかを確認します。

検査(必要に応じて)
全身の汗が急に増えた場合などには、甲状腺機能などを調べる血液検査をご提案することがあります。

治療方針のご説明
診察の結果をふまえ、治療の選択肢を分かりやすくご説明します。保険診療で行えるもの、保険診療とは別のご案内(自費)となるものについても、あらかじめお伝えします。

治療の開始・経過の確認
まずは塗り薬などから始め、効き方や副作用を確認しながら、必要に応じて次の選択肢を検討していきます。
治療方法・選択肢
ここでは一般的な治療をご紹介します。どれが適しているかは、部位・程度・年齢・生活への影響に応じて、医師が一人ひとりの状態に合わせて検討します。当院で実際に行える治療については、診察のうえでご案内します。
多汗症の治療
外用薬(塗り薬)
- 抗コリン外用薬 汗を出す指令を伝える物質のはたらきを抑えることで、発汗を抑えることを目指す塗り薬です。わきの下や手のひら向けの製剤があり、条件を満たす場合に保険診療の対象となります。口の渇き、目のかすみ、塗った部位の刺激感などの副作用が出ることがあります。
- 塩化アルミニウム外用 汗の出口に作用して発汗を抑える、古くから用いられている方法です。皮膚への刺激が出ることがあるため、使い方を調整します。
内服薬(飲み薬)
- 抗コリン内服薬 全身の発汗を抑える目的で用いられることがあります。口の渇き、便秘、目のかすみ、排尿しにくさなどの副作用が出やすく、緑内障や前立腺肥大のある方には使用できません。適応は慎重に判断します。
- 漢方薬 体質や症状に応じて用いられることがあります。
ボツリヌス毒素注射
汗を出す指令の伝達を抑える注射です。わきの下の場合、重度の原発性腋窩多汗症という条件を満たすと保険診療の対象となります。効果は数か月持続し、その後は再度の注射が必要です。手のひらへの注射は、保険適用外となる場合があります。注射時の痛み、一時的な筋力の低下などの可能性があります。
イオントフォレーシス
水を張った容器に手足を入れ、微弱な電流を流す治療です。手のひら・足の裏の多汗症に用いられます。継続的な通院が必要です。実施の可否は診察時にご説明します。
そのほか
症状が非常に強く、上記で対応が難しい場合には、外科的な治療(交感神経の手術など)が検討されることがあります。代償性発汗(別の部位の汗が増える)という重要な副作用があり、慎重な判断が必要です。実施できる医療機関は限られるため、必要な場合はご紹介いたします。
ワキガ(腋臭症)の治療
外用薬・日常のケア
- 制汗剤・殺菌成分を含む外用剤で、においのもとになる菌の増殖を抑えることを目指します。
- わきの毛を処理することで、菌が増えにくい環境をつくる助けになります。
ボツリヌス毒素注射
汗の量を減らすことで、においが軽くなることがあります。においそのものを直接消す治療ではありません。
外科的治療
アポクリン汗腺を取り除く手術(剪除法など)があります。条件を満たす場合に保険診療の対象となりますが、傷跡が残ること、一定期間の安静が必要なこと、再発の可能性があることなど、あらかじめご理解いただく点があります。実施の可否については診察時にご説明し、必要に応じて対応可能な医療機関へご紹介いたします。
そのほかの方法
医療機器を用いた方法などもありますが、保険診療とは別のご案内(自費)となるものが含まれます。当院での対応可否は診察時にご説明します。
ご家庭でのケア(セルフケア)
汗をこまめにふき取る
汗そのものより、汗が皮膚に残って菌に分解されることがにおいのもとです。汗ふきシートやタオルで、こすらずやさしく押さえて取りましょう。
通気性のよい衣類を選ぶ
綿や吸湿性の高い素材、速乾性のあるインナーが役立ちます。わき汗パッドの活用も有効です。
わきを清潔に保つ
1日1回の入浴で、よく泡立てた洗浄剤でやさしく洗いましょう。ゴシゴシ洗うと皮膚を傷め、かえって荒れます。
しっかり乾かす
湿った状態が続くと、菌が増えやすくなります。
制汗剤の使い方
汗をかいた後より、汗をかく前に使うほうが効果的とされています。皮膚が荒れる場合は、使用を中止してご相談ください。
足の多汗症の場合
同じ靴を毎日履かず、乾かしながらローテーションする。通気性のよい靴・靴下を選ぶ。5本指の靴下も有効なことがあります。水虫を併発しやすいため、皮膚の状態にも注意してください。
食生活
動物性脂肪の多い食事、香辛料、アルコールは、においに影響することがあるとされています。ただし、食事だけで解決するものではありません。
緊張との付き合い方
原発性局所多汗症は、緊張する場面で強くなります。「汗をかいたらどうしよう」という不安が、さらに汗を呼ぶこともあります。治療で汗をコントロールできると、この不安の連鎖が和らぐことがあります。
よくある質問
Q. 多汗症とワキガは違うのですか?
-
A. はい、別のものです。多汗症は汗の量が多い状態、ワキガはアポクリン汗腺による独特のにおいが生じる状態です。治療の方法も異なります。両方お持ちの方もいらっしゃいます。
Q. 保険は使えますか?
-
A. 症状によります。抗コリン外用薬や、条件を満たす場合のボツリヌス毒素注射(わきの下)、ワキガの手術などは、保険診療の対象となるものがあります。一方、保険診療とは別のご案内(自費)となる治療もあります。診察のうえで、それぞれについてご説明します。
Q.「気にしすぎ」と言われました。受診してよいのでしょうか。
-
A. どうぞご相談ください。汗やにおいのお悩みは、他人には分かりにくいものです。生活に影響しているのであれば、それは十分に治療を検討する理由になります。
Q. 治りますか?
-
A. 体質が関わるため、「これで終わり」と言い切れる性質のものではありません。一方で、治療によって症状をコントロールし、日常生活の負担を減らしていくことは十分に目指せます。
Q. 子どもでも治療できますか?
-
A. 年齢や症状によって、使える薬が異なります。学校生活に影響が出ているお子様もいらっしゃいますので、まずはご相談ください。
Q. ボツリヌス毒素注射は痛いですか?
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A. 細い針を複数回刺すため、チクチクとした痛みがあります。痛みへの配慮についてもご相談いただけます。効果は数か月持続し、その後は再度の注射が必要です。
Q. 制汗剤を使い続けても大丈夫ですか?
-
A. 皮膚に合っていれば問題ありませんが、赤みやかゆみが出る場合は使用を中止してご相談ください。制汗剤によるかぶれで受診される方もいらっしゃいます。
Q. 手術は必要ですか?
-
A. 多くの場合、まずは塗り薬や注射などから検討します。いきなり手術をおすすめすることはありません。段階的に選択肢を検討していきます。
Q. 急に汗が増えたのですが。
-
A. 全身の汗が急に増えた、夜間にも大量の汗をかく、体重が減った、動悸があるといった場合は、別の病気が背景にある可能性があります。早めにご相談ください。
Q. 食べ物でにおいは変わりますか?
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A. 動物性脂肪の多い食事や香辛料、アルコールが影響することがあるとされています。ただし、食事だけで解決するものではありません。ご希望があれば、院内の管理栄養士とご相談いただけます。
院長から患者様へ
皮膚は、体の状態を映す鏡だと、私は考えています。汗もまた、体からの表れのひとつです。
このお悩みで受診される方にお会いして、いつも思うのは、どれだけ長く、おひとりで抱えてこられたのだろうということです。周囲に相談しづらく、「気にしすぎ」と言われて終わってしまう。そうやって何年も、服の色を選び、握手を避け、人との距離を測ってこられた方が、たくさんいらっしゃいます。
まずお伝えしたいのは、これは医学的に対応できる症状だということです。そして、保険診療で使える薬は、この十年ほどで確実に増えています。「病院に行くほどのことではない」と思っておられた方にこそ、一度ご相談いただきたいと思っています。
治療の進め方については、いきなり負担の大きい方法をおすすめすることはありません。まずは塗り薬から、効き方を見ながら段階的に。そして、症状の重さは汗の量だけで決まるものではないと考えています。その方の生活にどれだけ影響しているか。そこをうかがったうえで、方針を決めていきたいと思っています。
私自身、患者様のお話をしっかりうかがい、分かりやすくご説明し、納得していただいたうえで治療を進めることを信条としています。話しにくいことをお話しくださること自体が、大きな一歩だと思っています。どうぞ安心してご相談ください。皮膚のことだけでなく、体全体の健康と美しさのかかりつけ医として、地域の皆さまにご利用いただけるクリニックでありたいと願っています。
川名ごとう皮フ科クリニック 院長 後藤 克修
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