離乳食を始めたら、口のまわりが赤くなった。ある食べ物を食べた後に、じんましんが出た。お子様の食物アレルギーは、ご家族にとって不安の大きいテーマです。「何を食べさせていいのか分からない」「除去しすぎているのではないか」と悩まれる方も少なくありません。食物アレルギーの考え方は、この十数年で大きく変わりました。かつては「疑わしいものは避ける」が基本でしたが、現在は「必要最小限の除去」、つまり正しく診断し、食べられるものは食べていくことが大切とされています。このページでは、食物アレルギーの症状や検査、皮膚科でできることを、できるだけ分かりやすくご説明します。川名ごとう皮フ科クリニックでは、皮膚の状態を整えることを土台に、食物アレルギーのご相談も承っています。
食物アレルギーとは
食物アレルギーは、特定の食べ物に含まれるたんぱく質を、体の免疫が「排除すべきもの」と誤って認識し、過剰に反応してしまうことで起こります。
食べ物は本来、体に必要な栄養です。通常、口から入ったものに対して体は過剰に反応しないよう調節されています(経口免疫寛容)。この調節がうまく働かないと、食べるたびに症状が出るようになります。
原因となる食べ物は年齢によって傾向が異なります。乳幼児期には鶏卵、牛乳、小麦が多く、学童期以降では甲殻類、果物、そば、ピーナッツ、木の実類などが増えてきます。
大切なのは、乳幼児期に発症した鶏卵・牛乳・小麦のアレルギーの多くは、成長とともに食べられるようになっていく(耐性を獲得する)ことが知られている、という点です。「一生食べられない」と決まっているわけではありません。だからこそ、定期的に状態を確認しながら、食べられる範囲を広げていく視点が重要になります。

皮膚と食物アレルギーの関係
近年注目されているのが、皮膚のバリア機能と食物アレルギーの関係です。
湿疹などで皮膚のバリアが壊れていると、そこから食物のたんぱく質が体内に入り込み、アレルギーを起こしやすい形で覚えられてしまう(経皮感作)と考えられています。一方、口から適切に食べることは、体が「これは安全なもの」と学ぶ助けになります。
つまり、乳児期の湿疹をしっかり治し、皮膚をよい状態に保つことが、食物アレルギーへの対応としても意味を持つと考えられているのです。皮膚科が食物アレルギーに関わる理由が、ここにあります。
主な症状
食物アレルギーの症状は、食べてから比較的短時間(多くは2時間以内)に現れます。
- 皮膚
じんましん、赤み、かゆみ、湿疹の悪化、まぶたや唇の腫れ - 口・のど
口の中やのどのかゆみ・違和感、いがいがする感じ - 消化器
腹痛、嘔吐、下痢 - 呼吸器
せき、ゼーゼーする、息苦しさ、声がかすれる - 目・鼻
目のかゆみ・充血、くしゃみ、鼻水 - 全身
顔色が悪い、ぐったりする、意識がもうろうとする
最も多いのは皮膚の症状です。一方で、複数の臓器に同時に強い症状が出る状態をアナフィラキシーといい、血圧の低下や意識障害を伴う場合(アナフィラキシーショック)は、生命に関わる緊急事態です。
次のような症状があれば、迷わず救急要請(119番)をしてください。
- 呼吸が苦しそう、ゼーゼーする、声が出にくい
- 繰り返し吐く、強い腹痛が続く
- 顔色が青白い、ぐったりする、意識がはっきりしない
- 唇や爪が青紫色になる
特殊なタイプ
食物依存性運動誘発アナフィラキシー
特定の食べ物を食べた後に運動をしたときにだけ症状が出るものです。小麦や甲殻類で知られ、学童期以降に多くみられます。「食べただけ」「運動しただけ」では起こらないため、原因に気づきにくいのが特徴です。
口腔アレルギー症候群
果物や生野菜を食べたときに、口の中やのどにかゆみ・違和感が出るものです。花粉症のある方に多く、花粉のたんぱく質と果物のたんぱく質が似ているために起こると考えられています(交差反応)。シラカバ花粉とリンゴ・モモ、ブタクサ花粉とメロン・スイカなどの組み合わせが知られています。
新生児・乳児食物蛋白誘発胃腸症
じんましんではなく、嘔吐や血便といった消化器の症状で現れるタイプです。
食物アレルギーが疑われるとき・セルフチェック
次のような場合、食物アレルギーが関係している可能性があります。あくまで受診の目安としてご確認ください。
特定の食べ物を食べた後、2時間以内にじんましんや赤みが出た
同じ食べ物で、複数回同じような症状が出た
離乳食を始めてから、口のまわりが赤くなることが増えた
乳児期から湿疹があり、なかなか落ち着かない
果物や生野菜で、口の中がかゆくなる
食後に運動をしたときだけ、じんましんが出たことがある
ご家族にアレルギー体質の方がいる
なお、食べた直後に口のまわりが赤くなるのは、食べ物が皮膚に触れた刺激による場合もあります(接触による赤み)。この場合はアレルギーとは異なります。見分けが難しいため、自己判断で除去を始める前にご相談ください。
自己判断での除去が危険な理由(早期受診の重要性)
食物アレルギーで最も気をつけていただきたいのが、検査結果や思い込みだけで、食べ物を除去してしまうことです。
血液検査の数値=食べられない、ではありません。
血液検査で特異的IgE抗体が陽性でも、実際には食べても症状が出ない方は多くいらっしゃいます。逆に、数値が低くても症状が出ることもあります。検査は診断の一つの材料であり、それだけで「食べられない」と判断することはできません。
不要な除去は、お子様の負担になります。 必要のない食物除去は、栄養面での偏りにつながるほか、食べる機会が減ることで、かえって食べられるようになりにくくなる可能性も指摘されています。ご家族の食事づくりの負担、保育園・学校での対応の負担も大きくなります。
一方で、正しく診断されないまま食べ続けることも危険です。
症状が出ているのに原因が分からないまま食べ続けると、より強い反応につながることがあります。
皮膚をそのままにしておくことも、望ましくありません。
乳児期の湿疹を放置すると、皮膚のバリアが壊れた状態が続きます。皮膚をよい状態に保つことが、食物アレルギーへの対応としても意味を持つと考えられています。
つまり、食物アレルギーは「疑わしきは避ける」ではなく、「正しく調べて、必要な分だけ避け、食べられるものは食べていく」という考え方が現在の基本です。そのためには、自己判断ではなく、医療機関での評価が欠かせません。なお、経過や検査結果の解釈には個人差があります。
当院の食物アレルギー診療の特徴
食物アレルギーの診療は、保険診療での問診・検査が基本です。川名ごとう皮フ科クリニックでは、皮膚科として皮膚の状態を整えることを土台に、食物アレルギーのご相談を承っています。そのうえで、より専門的な評価が必要な場合には、適切な医療機関へおつなぎいたします。
皮膚科専門医による診療
当院の院長・後藤克修は、日本皮膚科学会が認定する皮膚科専門医です。食物アレルギーは皮膚の症状として現れることが多いため、湿疹やじんましんとの見分け、そして皮膚の状態を整えることを大切にしています。
皮膚を整えることから始める
食物アレルギーのご相談で当院がまず取り組むのは、皮膚をよい状態にすることです。乳児期の湿疹をしっかり治療し、保湿でバリア機能を保つ。地味ですが、これが食物アレルギーへの対応として意味を持つと考えられています。そのうえで、症状の経過をていねいにうかがい、必要に応じて血液検査などをご提案します。検査は「数値を見るため」ではなく、症状と組み合わせて判断するために行うものです。当院では、検査結果だけで除去を決めることはせず、実際に何を食べたときにどんな症状が出たのかを一緒に整理していきます。食物経口負荷試験など、専門的な体制が必要な検査については、対応可能な医療機関へご紹介いたします。
通いやすい体制
所在地は名古屋市昭和区折戸町で、地下鉄鶴舞線「川名駅」から徒歩10分ほど、屋根付きの駐車場を14台分ご用意しています。院内にはキッズコーナーや多目的トイレを設け、お子様連れのご家族が来院しやすい環境づくりを心がけています。
栄養・生活面のサポートも院内で(ご希望に応じて)
当院には管理栄養士が在籍し、ご希望に応じて、食事や栄養面のご相談も同じ場所で受けていただけます。除去が必要な場合の献立の工夫や、栄養が偏らないための考え方など、日々の食卓に関するご相談を承ります。これは、医師による診断と方針を基本としたうえで、ご希望に応じてご案内している追加のサポートです。なお、こうした栄養・生活面のサポートは、保険診療とは別のご案内(自費)となります。くわしくは診察時にご説明します。
食物アレルギー診療の流れ(初診〜)
初めて受診される際の、大まかな流れをご説明します。実際の進め方は、症状や状態によって変わる場合があります。

受付・問診
ご来院後、問診票に、症状が出たときの状況(何を・どのくらい・いつ食べたか、どのくらいの時間で・どんな症状が出たか)、これまでの経過、湿疹の有無、ご家族のアレルギー歴などをご記入いただきます。食べたものと症状を記録したメモがあると、診断の大きな助けになります。

診察
医師が皮膚の状態を直接診て、湿疹やじんましんの様子を確認します。症状が出たときの経過を詳しくうかがいます。

検査(必要に応じて)
血液検査(特異的IgE抗体)などをご提案する場合があります。ただし、検査は診断の一つの材料であり、結果だけで食べられるかどうかを決めるものではありません。

方針のご説明
診察と検査の結果をふまえ、現時点で分かること、必要な対応、今後の見通しを分かりやすくご説明します。当院では、患者様とご家族に納得していただいたうえで進めることを大切にしています。

皮膚の治療・経過の確認
湿疹がある場合は、その治療とスキンケアを進めます。定期的に経過を確認し、必要に応じて方針を見直します。より専門的な評価が必要な場合には、医療機関へご紹介いたします。
食物アレルギーの検査・対応
ここでは一般的な検査と対応をご紹介します。どれが適しているかは、年齢・症状・経過に応じて、医師が一人ひとりの状態に合わせて検討します。
問診(最も重要)
食物アレルギーの診断で最も大切なのが、症状が出たときの状況を詳しく確認することです。何を、どのくらい食べて、どのくらいの時間で、どんな症状が出たのか。同じ食べ物で繰り返し起きているのか。この情報が、どの検査結果よりも診断の土台になります。
血液検査(特異的IgE抗体検査)
疑わしい食べ物に対する抗体の量を調べる検査です。ただし、繰り返しになりますが、陽性=食べられない、ではありません。症状と組み合わせて解釈するものです。また、症状のない食べ物まで手当たり次第に調べることは、かえって不必要な除去につながるため推奨されていません。
皮膚プリックテスト
皮膚にごく少量の抗原をつけて、反応を見る検査です。実施の可否については診察時にご説明します。
食物経口負荷試験
実際に原因と疑われる食物を、医師の管理のもとで少量から食べて反応を確認する検査です。診断の確定や、食べられる量を確かめるために行われます。アナフィラキシーに対応できる体制が必要なため、実施できる医療機関は限られます。必要と判断した場合は、対応可能な施設へご紹介いたします。
必要最小限の除去
診断がついた場合も、「すべて完全に除去する」のではなく、食べられる範囲を確かめながら、必要な分だけ避けるのが現在の考え方です。加熱すれば食べられる、少量なら大丈夫、といったことも少なくありません。
皮膚の治療
湿疹がある場合は、その治療が優先されます。ステロイド外用薬などで炎症をしっかり抑え、保湿でバリア機能を保ちます。
緊急時への備え
アナフィラキシーの既往がある場合などには、アドレナリン自己注射薬(エピペン®)の処方が検討されることがあります。処方には登録などの手続きが必要で、対応する医療機関が限られます。必要と判断した場合はご案内いたします。
ご家庭でのケア・注意点
食べたものと症状を記録する
いつ・何を・どのくらい食べて、どのくらいの時間で・どんな症状が出たか。写真も残しておくと診察でとても役立ちます。
自己判断で除去を始めない・広げない
「たぶんこれだろう」で除去を始めると、原因の特定が難しくなり、不要な除去につながります。まずはご相談ください。
皮膚をよい状態に保つ
湿疹は早めに治療し、保湿を毎日続けましょう。皮膚を整えることは、食物アレルギーへの対応としても意味を持つと考えられています。
離乳食は自己判断で遅らせない
かつては「アレルギーが心配だから遅らせる」と考えられていましたが、現在はむしろ、適切な時期に少量から始めることがすすめられています。進め方に不安があれば、ご相談ください。
食品表示を確認する習慣を
除去が必要な場合、加工食品の表示確認が欠かせません。表示のルールについても、ご相談いただけます。
園・学校との情報共有
除去が必要な場合、施設との連携が必要です。必要な書類についてはご相談ください。
緊急時の対応を家族で共有する
どんな症状が出たら救急要請するのか、あらかじめご家族で確認しておくと安心です。
よくある質問
Q. 血液検査で陽性なら、食べてはいけませんか?
-
A. いいえ。陽性でも実際には食べられる方は多くいらっしゃいます。検査は診断の一つの材料であり、それだけで食べられるかどうかは決まりません。実際にどんな症状が出たのかと組み合わせて判断します。自己判断で除去を始める前に、ご相談ください。
Q. アレルギーが心配なので、疑わしい食品を全部調べてほしいのですが。
-
A. 症状のない食べ物まで幅広く検査することは、現在は推奨されていません。陽性という結果だけが残り、必要のない除去につながってしまうためです。症状の経過をうかがったうえで、必要な項目に絞ってご提案します。
Q. 食物アレルギーは治りますか?
-
A. 乳幼児期に発症した鶏卵・牛乳・小麦のアレルギーの多くは、成長とともに食べられるようになっていくことが知られています。一方、甲殻類やナッツ類などは続くことが比較的多いとされます。定期的に状態を確認しながら進めていくことが大切です。
Q. 検査や診療には保険が使えますか?
-
A. 食物アレルギーの診断のための診察・検査は、保険診療の対象です。なお、栄養・生活面のサポートなど、保険診療とは別に(自費で)ご案内する取り組みもあります。費用について気になる点は、診察時にお尋ねください。
Q. 湿疹を治すと、食物アレルギーになりにくいのですか?
-
A. 皮膚のバリアが壊れていると、そこから食物のたんぱく質が入り込み、アレルギーを起こしやすい形で覚えられてしまう可能性が指摘されています。湿疹を治し、皮膚をよい状態に保つことには意味があると考えられていますが、それだけで防げると保証できるものではありません。
Q. 離乳食はいつから始めればよいですか?
-
A. アレルギーを心配して遅らせる必要はないとされています。むしろ適切な時期に少量から始めることがすすめられています。ただし、すでに湿疹がある場合など、状況によって進め方の注意点が変わりますので、ご相談ください。
Q. 口のまわりが赤くなるのは、アレルギーですか?
-
A. 食べ物が皮膚に触れた刺激で赤くなることもあり、アレルギーとは限りません。食べる前にワセリンなどで保護すると軽くなる場合もあります。見分けが難しいため、一度診察でご確認ください。
Q. アナフィラキシーが心配です。
-
A. 呼吸が苦しい、繰り返し吐く、ぐったりする、意識がはっきりしないといった症状があれば、迷わず救急要請(119番)をしてください。既往がある場合の備えについては、診察時にご相談ください。
Q. 大人でも食物アレルギーになりますか?
-
A. なります。甲殻類、そば、果物、木の実類などで、成人してから発症することがあります。また、食後に運動したときだけ症状が出るタイプもあります。心当たりがあればご相談ください。
院長から患者様へ
皮膚は、体の状態を映す鏡だと、私は考えています。食物アレルギーは、まさにそれを実感するテーマです。食べたものへの反応が皮膚に表れ、また逆に、皮膚の状態が食べ物への反応の起こりやすさにも関わっている。体の内と外は、切り離せないものだと感じています。
食物アレルギーのご相談で、私が最も大切にしたいのは、必要のない不安と、必要のない除去を増やさないことです。検査で陽性が出たというだけで、何年も食べさせずにこられたご家族にお会いすることがあります。数値は事実の一部でしかなく、それだけでお子様の食卓を狭めてしまうのは、あまりに惜しいことだと思っています。
同時に、皮膚科医としてできることは、皮膚をよい状態に保つことだと考えています。乳児期の湿疹をていねいに治し、保湿を続ける。地味な積み重ねですが、これが体全体のアレルギーへの向き合い方につながっていくと考えています。
そして、当院でできることと、専門的な体制が必要なことを見極めることも、私の責任です。負荷試験など、より専門的な評価が必要な場合には、速やかにおつなぎいたします。
私自身、患者様とご家族のお話をしっかりうかがい、分かりやすくご説明し、納得していただいたうえで進めることを信条としています。ご希望があれば、日々の食事のことを院内の管理栄養士とご一緒にご相談いただくこともできます。食べることは、毎日の楽しみでもあります。安心して食卓を囲めるよう、お手伝いさせてください。
川名ごとう皮フ科クリニック 院長 後藤 克修
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