よだれが増えてきた時期から、口のまわりやあごが赤くなってきた。拭いても拭いても、また濡れてしまう。よだれかぶれは、生後4〜6か月ごろからよだれの量が増えるにつれて、多くの赤ちゃんにみられる肌トラブルです。困るのは、原因であるよだれを止められないこと。そして、拭くこと自体がまた刺激になってしまうことです。それでも、ちょっとした工夫で負担はぐんと軽くなります。このページでは、よだれかぶれの原因と、ご家庭でできるケア、受診の目安をご説明します。川名ごとう皮フ科クリニックでは、お子様の肌のご相談も承っています。

よだれかぶれとは
よだれかぶれは、よだれが皮膚に付いたままになることで起こる、刺激性接触皮膚炎です。アレルギーではなく、刺激そのものによる炎症です。
「よだれ」は、消化を助けるための消化酵素を含んでいます。この酵素は、口の中では役に立ちますが、皮膚に付いたままになると、皮膚の表面のたんぱく質にはたらきかけ、バリア機能を弱めてしまいます。加えて、
- 濡れた状態が続くことで、皮膚がふやける(ふやけた皮膚は非常に弱くなります)
- 拭くたびに摩擦が加わる
- 食べこぼしやミルクも一緒に付く
これらが重なって、赤みやカサつきが生じます。
よだれが増えるのは、生後4〜6か月ごろから。この時期は、歯が生えはじめる時期、そしてまだ上手に飲み込めない時期と重なります。つまり、よだれかぶれは「成長の途中で通る道」でもあります。多くは、飲み込みが上手になり、よだれの量が減るとともに落ち着いていきます。
なお、指しゃぶりやおしゃぶりの使用、離乳食が始まってからの食べこぼしも、同じ部位の刺激になります。
主な症状
- 口のまわり、あご、頬、首に赤みが出る
- カサカサする、皮がむける
- 小さなブツブツができる
- ひどくなると、じくじくする・皮膚がめくれる
- かゆがって、こすったりかいたりする
よだれが付く場所に一致して症状が出るのが特徴です。口のまわり、あご、そしてよだれが伝って落ちる首やくびのしわの部分に出やすくなります。
気をつけたい見分け
よだれかぶれによく似た症状で、別の対応が必要なものもあります。
とびひ(伝染性膿痂疹)
かき壊した部分がじくじくして、黄色いかさぶたが付く場合。抗菌薬による治療が必要です。
口周囲の湿疹・アトピー性皮膚炎
口のまわり以外にも湿疹があり、良くなったり悪くなったりをくり返す場合。
食物アレルギーによる症状
特定の食べ物を食べた後に、決まって赤みやじんましんが出る場合。ただし、食べ物が皮膚に触れた刺激で赤くなることも多く、アレルギーとは限りません。この見分けは重要で、自己判断で除去を始める前にご相談ください。
口周囲皮膚炎
ステロイド外用薬を長く使い続けた後などに、口のまわりに赤いブツブツが出るもの。
カンジダによるもの
なかなか治らない場合に、まれに関わっていることがあります。
受診の目安
- ご家庭でのケアを続けても、良くならない
- 赤みが強い、じくじくしている
- 黄色いかさぶたが付いている(とびひの可能性)
- かゆがって、こすったりかいたりしている
- 口のまわり以外にも湿疹がある
- 特定の食べ物を食べた後に、決まって症状が出る
- 授乳や離乳食のときに痛がる
とくに、特定の食べ物との関係が疑われる場合は、一度ご相談いただくことをおすすめします。刺激による赤みなのか、アレルギーなのかで、対応がまったく変わるためです。
そのままにしておくとどうなるか
かき壊しから感染につながることがあります。
かゆくてこすっているうちに皮膚が傷つき、そこから細菌が入るととびひになることがあります。夏場は特に注意が必要です。
授乳や食事に影響することがあります。
痛みがあると、口のまわりに触れることを嫌がり、飲みや食べが進まなくなることがあります。
バリアが壊れた状態が続きます。
皮膚のバリアが弱った状態が続くことの影響が指摘されています。乳児期の皮膚を良い状態に保つことには意味があると考えられています。
食物アレルギーの見極めが遅れることがあります。
「よだれかぶれだろう」と思っていたものが、実は特定の食べ物への反応だった、ということもあります。逆に、刺激による赤みなのに「アレルギーかも」と自己判断で食事を制限してしまうのも、お子様にとって望ましくありません。
一方、よだれかぶれの多くは、ケアの工夫と短期間の治療で落ち着きます。なお、経過や治療への反応には個人差があります。
当院のよだれかぶれ診療の特徴
よだれかぶれは、塗り薬とスキンケアによる標準的な治療(保険診療)が基本です。川名ごとう皮フ科クリニックでは、まず保険診療でできる治療をしっかり行うことを土台に、ご家庭で無理なく続けられるケアを一緒に組み立てることを心がけています。
皮膚科専門医による診療
当院の院長・後藤克修は、日本皮膚科学会が認定する皮膚科専門医です。口のまわりの赤みは、刺激によるもの、湿疹、食物との関係が疑われるものなど原因がさまざまなため、経過をうかがったうえで見極めることを大切にしています。
「止められない刺激」にどう向き合うか
よだれかぶれの難しさは、原因であるよだれを止められないことにあります。だからこそ当院では、「よだれを減らす」のではなく、「よだれが皮膚に触れないようにする」という方向でケアを組み立てます。
鍵になるのが、先に塗って守っておくという考え方です。ワセリンなどで皮膚に膜をつくっておけば、よだれが直接触れるのを和らげられます。授乳や食事の前に塗っておくだけで、変わってくることがあります。この「予防的に塗る」という発想は、意外と知られていません。
また、食物との関係が疑われる場合には、その点も一緒に整理します。ただし、自己判断での食物除去はおすすめしていません。まず皮膚を整えることから始め、必要に応じて検査や、より専門的な評価が可能な医療機関へのご紹介を検討します。ご希望があれば、離乳食の進め方について院内の管理栄養士とご相談いただくこともできます(保険診療とは別のご案内・自費となります)。
通いやすい体制
所在地は名古屋市昭和区折戸町で、地下鉄鶴舞線「川名駅」から徒歩10分ほど、屋根付きの駐車場を14台分ご用意しています。屋根付きですので、雨の日でもベビーカーやチャイルドシートからの移動がしやすくなっています。院内にはキッズコーナーや多目的トイレを設け、赤ちゃん連れのご家族が来院しやすい環境づくりを心がけています。
診療の流れ(初診〜)

受付・問診
問診票に、症状に気づいた時期、経過、これまでのケア、離乳食の進み具合、指しゃぶりやおしゃぶりの有無、ご家族のアレルギー歴などをご記入いただきます。特定の食べ物との関係が気になる場合は、そのときの状況をできるだけ具体的にお聞かせください。

診察
医師が皮膚の状態を直接診て、赤みの範囲と分布を確認します。よだれが付く場所に一致しているか、それ以外にも湿疹があるかが、見分けの手がかりになります。

検査(必要に応じて)
食物との関係が疑われる場合には、血液検査などをご提案することがあります。とびひが疑われる場合は、細菌の検査を行うことがあります。

治療方針のご説明
お薬の種類・塗り方・期間と、ご家庭でのケアを具体的にご説明します。

経過の確認
数日〜1週間ほどで再診し、良くなり方を確認します。
治療方法
保護剤(皮膚を守る)
ワセリンなど、皮膚の表面に膜をつくって、よだれや食べ物から守るものです。よだれかぶれのケアの中心になります。症状が出ていないときも、予防として塗っておくのが効果的です。
ステロイド外用薬
赤みや炎症が強い場合に、短期間用います。顔は皮膚が薄いため、弱めのランクのものを選びます。口のまわりは、なめてしまうことを心配される方が多いのですが、塗る量はごくわずかで、医師の指示に沿って使う分には過度に心配される必要はありません。 ご不安な点は診察時にお尋ねください。良くなったら保護剤に切り替えていきます。
抗菌薬
とびひなど、細菌感染をともなう場合に用います。
保湿剤
乾燥をともなう場合に用います。
ご家庭でのケア
よだれかぶれのケアは、**「こすらない・洗って乾かす・先に塗って守る」**の3つが基本です。
1. こすらない
これが最も大切です。よだれを拭くとき、ゴシゴシこすらないでください。
- ガーゼやタオルを湿らせて、押さえるように拭く
- 乾いたティッシュやハンカチでこするのは避ける
- 拭く回数を減らすより、拭き方を変えるほうが効果的です
2. 洗って乾かす
- 汚れが付いたままにせず、ぬるま湯でやさしく洗い流すのが理想です
- 洗浄剤を使う場合は、よく泡立てて、泡でなでるように
- 洗ったら、タオルで押さえるように水分を取る
3. 先に塗って守る
- 授乳・食事の前に、口のまわりにワセリンをうすく塗っておく
- 食後は、やさしく拭いてから、また塗り直す
- 1日に何度でも構いません。「汚れる前に守っておく」という発想です
そのほかの工夫
- スタイ(よだれかけ)はこまめに交換 濡れたままだと、首元がふやけます
- 首のしわの奥まで確認 よだれが伝って落ち、しわの奥にたまります。広げて洗い、しっかり乾かしましょう
- 爪は短く かき壊しを防ぎます
- 市販薬の自己判断は避ける 顔は皮膚が薄く、合わない薬で悪化することがあります
- 自己判断で食事を制限しない まずはご相談ください
そして、ご自身を責めないでください
よだれかぶれは、よだれが増えるという成長の証でもあります。ケアが足りないから起こるのではありません。どうか、ご自身を責めないでください。
よくある質問
Q. よだれを止めることはできませんか?
-
A. よだれは成長の過程で自然に増えるもので、止めることはできません。多くは、飲み込みが上手になるとともに減っていきます。ですから対策は、「よだれを減らす」のではなく「皮膚に触れさせない」方向で考えます。
Q. ワセリンを塗ったまま、口に入っても大丈夫ですか?
-
A. ワセリンは口に入っても問題のない成分です。うすく塗る分には心配ありません。むしろ、塗らずに刺激を受け続けるほうが、皮膚には負担になります。
Q. 口のまわりにステロイドを塗って大丈夫ですか?
-
A. 医師の指示に沿って、弱めのランクのものを短期間使う分には、必要な治療です。塗る量はごくわずかです。ご不安な点は診察時にお尋ねください。
Q. 離乳食で口のまわりが赤くなります。アレルギーでしょうか?
-
A. 食べ物が皮膚に触れた刺激で赤くなることも多く、アレルギーとは限りません。食べる前にワセリンを塗っておくと軽くなる場合もあります。ただし、じんましんが出る、繰り返し同じ食べ物で症状が出るといった場合は、一度ご相談ください。自己判断で食事を制限しないでください。
Q. 治療には保険が使えますか?
-
A. よだれかぶれの診断・治療は保険診療の対象です。お住まいの自治体の医療費助成も適用されます。
Q. どのくらいで治りますか?
-
A. ケアの見直しと短期間の治療で、数日〜1週間ほどで落ち着くことが多くあります。ただし、よだれが多い時期が続くかぎり、ぶり返しやすいのも事実です。予防的なケアを続けることが大切です。
Q. おしゃぶりや指しゃぶりはやめさせたほうがよいですか?
-
A. どちらもお子様にとって意味のある行動なので、無理にやめさせる必要はありません。ただし、周囲が濡れたままにならないよう、こまめに拭いて保護剤を塗ることをおすすめします。
Q. いつまで続きますか?
-
A. よだれの量が減る時期には個人差がありますが、多くは1歳半〜2歳ごろまでに落ち着いていきます。それまでは、予防的なケアで乗り切りましょう。
院長から患者様へ
皮膚は、体の状態を映す鏡だと、私は考えています。よだれかぶれは、赤ちゃんが成長している証でもあります。よだれが増えるのは、体が育っている途中だからです。ですから私は、この症状を「困ったこと」というより、「成長に伴走するなかで、どう肌を守るか」という課題として考えたいと思っています。
診療で大切にしているのは、「先に塗って守る」という発想をお伝えすることです。よだれは止められません。だとすれば、汚れてから対処するより、汚れる前に守っておくほうが理にかなっています。授乳や食事の前にワセリンをうすく塗っておく。それだけで変わるお子様は、たくさんいらっしゃいます。この一手間を知っているかどうかで、ご家族の負担がずいぶん違ってきます。
もうひとつ大切にしているのが、食物との関係を早合点しないことです。口のまわりが赤くなると、「食物アレルギーではないか」とご心配になるのは自然なことです。けれど、食べ物が皮膚に触れた刺激で赤くなることも多く、その場合に食事を制限してしまうのは、お子様にとって惜しいことです。まずは皮膚を整えて、それでも症状が出るかを見る。この順番を守りたいと考えています。
私自身、患者様とご家族のお話をしっかりうかがい、分かりやすくご説明し、納得していただいたうえで治療を進めることを信条としています。「これくらいで受診してよいのだろうか」と迷われる必要はありません。どうぞお気軽にご相談ください。
川名ごとう皮フ科クリニック 院長 後藤 克修
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