料理中に熱湯がかかった。転んでひざをすりむいた。包丁で指を切ってしまった。やけどや傷は、日常のなかで誰にでも起こりうるものです。「たいしたことはないから」とご自身で手当てをして済ませる方も多いのですが、実は傷は、最初の処置と、その後の乾かさない管理で、治り方も、跡の残り方も大きく変わります。とくにやけどは、見た目の赤みだけでは深さが判断できず、後から悪化することもあります。このページでは、熱傷(やけど)・きり傷・すり傷について、応急処置の考え方から治療、跡への対応までを、できるだけ分かりやすくご説明します。川名ごとう皮フ科クリニックでは、皮膚科専門医による保険診療を土台に、傷を治すことと、跡をできるだけ目立たせないことの両方を大切にしています。
熱傷・きり傷・すり傷とは
皮膚は、体を守るいちばん外側の壁です。この壁が破れた状態が「傷(創傷)」であり、原因によって呼び方が変わります。
熱傷(やけど)
熱、化学物質、電気、摩擦などによって皮膚が傷つくものです。深さによって次のように分けられます。

- I度
皮膚の表面(表皮)のみ。赤くなり、ヒリヒリしますが、水ぶくれはできません。数日で治り、跡は残りにくいとされます。 - 浅達性II度
表皮の下(真皮の浅い層)まで。水ぶくれができ、強い痛みを伴います。通常2週間ほどで治り、跡は残りにくいとされます。 - 深達性II度
真皮の深い層まで。水ぶくれの底が白っぽく、痛みはかえって鈍いことがあります。治るのに3〜4週間以上かかり、跡が残ることがあります。 - III度
皮膚の全層。白色や黒褐色、革のような状態になり、痛みを感じません。皮膚が再生しないため、多くの場合は手術的な治療が必要です。
やけどで注意していただきたいのは、受傷直後には深さの判断が難しいという点です。「赤いだけだから大丈夫」と思っていたものが、数日後に水ぶくれになったり、より深いやけどだったと分かったりすることは珍しくありません。
きり傷(切創)
刃物やガラスなどで皮膚が切れた傷です。傷の縁が比較的そろっているのが特徴で、深さによっては縫合が必要になります。深い傷では、神経や腱が損傷していることもあります。

すり傷(擦過傷)
転倒などで皮膚がこすれて削れた傷です。浅くても範囲が広いことが多く、砂や小石などの異物が入り込みやすいのが特徴です。異物が残ったまま治ると、色素が皮膚に残ってしまう「外傷性刺青(がいしょうせいしせい)」となることがあります。

さし傷(刺創)
釘や針などが刺さった傷です。見た目の傷口は小さくても深く、感染のリスクが高いことがあります。
主な症状・注意したいサイン
次のような場合は、早めの受診をおすすめします。
やけどに水ぶくれができている
やけどの範囲が手のひらより広い
顔、手、足、関節、陰部のやけど
痛みを感じない、皮膚が白い・黒い(深いやけどの可能性)
傷が深く、脂肪が見える、出血が止まりにくい
傷口が開いている(縫合が必要な可能性)
砂や異物が入り込んでいる
赤み・腫れ・熱感・痛みが強くなってきた(感染のサイン)
膿が出る、においがある
発熱を伴う
動物や人にかまれた
化学物質や電気によるやけど
糖尿病や血行の病気で治療を受けている
とくにお子様や高齢の方は、皮膚が薄く、同じ条件でも深いやけどになりやすいとされています。ご家庭での判断に迷われたら、一度ご相談ください。
傷が治る仕組み
傷が治る過程は、大きく3つの段階に分けられます。
炎症期(受傷直後〜数日)
傷を修復するための細胞が集まり、細菌などを排除しようとする段階です。赤み、腫れ、痛みが生じます。
増殖期(数日〜数週間)
新しい組織(肉芽)や血管ができ、皮膚が傷の縁から中央へと再生していきます。
成熟期(数週間〜数か月、場合により1年以上)
できた組織が整えられ、赤みが引き、跡が目立ちにくくなっていきます。
この過程で重要なのが、傷の表面を乾かさないことです。かつては「傷は乾かして、かさぶたを作るのがよい」と考えられていましたが、現在では、適度な湿り気を保った環境のほうが、皮膚の再生がスムーズに進み、跡も目立ちにくくなると考えられています(湿潤療法)。傷から出る滲出液(しんしゅつえき)には、治りを助ける成分が含まれているためです。
「消毒してかさぶたを作る」という昔ながらの方法は、状況によってはかえって治りを妨げることがあります。傷の種類や汚染の程度によって適切な方法は異なりますので、判断に迷う場合はご相談ください。
熱傷・きり傷・すり傷を放置するとどうなるか(早期受診の重要性)
「そのうち治るから」と自己処置だけで済ませていると、次のようなことが起こることがあります。
感染を起こす
傷口から細菌が入り、赤みや腫れ、痛み、膿を生じます。感染が起こると治りが遅れ、跡も残りやすくなります。深く進むと、蜂窩織炎など全身に影響する状態になることもあります。
深いやけどが見逃される
やけどは、受傷直後よりも数日たってから本当の深さが分かることがあります。深達性II度以上のやけどでは、適切な処置をしないと治るまでに時間がかかり、目立つ跡(肥厚性瘢痕・ケロイド)が残ったり、関節では動きが制限される(拘縮)ことがあります。
異物が残る
すり傷に入り込んだ砂や小石をきちんと取り除かないまま治ると、色素が皮膚に残って青黒い跡(外傷性刺青)となり、後から取り除くことが難しくなります。
縫合の時期を逃す
きり傷は、受傷から時間が経つほど縫合が難しくなり、傷口が開いたまま治って跡が目立つことがあります。
跡が目立つ形で残る
治り方が悪いと、盛り上がった跡(肥厚性瘢痕)や、赤く硬い跡(ケロイド)になることがあります。いったん形成されると、改善には時間がかかります。
一方で、適切な初期対応と管理を行えば、治りは早く、跡も目立ちにくくなることが期待できます。「これくらいなら」と迷われたときこそ、一度ご相談いただければと思います。なお、経過や治療への反応には個人差があります。
当院の熱傷・きり傷・すり傷の治療の特徴
やけどや傷の治療は、保険診療による処置が基本です。川名ごとう皮フ科クリニックでは、まず保険診療でできる標準的な治療をしっかり行うことを土台に、治すことと、跡をできるだけ目立たせないことの両方を意識した診療を心がけています。
皮膚科専門医による診療
当院の院長・後藤克修は、日本皮膚科学会が認定する皮膚科専門医です。やけどの深さの見極めや、傷の処置の判断を大切にしています。
治すことと、跡を考えることを同時に
傷の治療では、「早く治す」ことと「きれいに治す」ことは切り離せません。当院では、傷の状態に合わせて適切な被覆材を選び、乾かさない管理を行うことで、皮膚の再生を妨げない環境づくりを心がけます。また、治った後の赤みや盛り上がりについても、必要に応じて対応をご相談いただけます。紫外線を避けることや、保湿を続けることといった、跡を目立たせないための日常のケアも、あわせてお伝えします。深いやけどや広範囲の受傷、腱や神経の損傷が疑われる場合など、専門的な治療が必要と判断した場合には、これまで診療にあたってきた基幹病院をはじめとする連携医療機関へ速やかにご紹介いたします。
通いやすい体制
所在地は名古屋市昭和区折戸町で、地下鉄鶴舞線「川名駅」から徒歩10分ほど、屋根付きの駐車場を14台分ご用意しています。院内にはキッズコーナーや多目的トイレを設け、お子様連れのご家族から大人の方まで、幅広い世代が通いやすい環境づくりを心がけています。傷の処置は数日おきの通院が必要になることが多いため、無理なく通える環境を整えてまいります。
熱傷・きり傷・すり傷の治療の流れ(初診〜)
初めて受診される際の、大まかな流れをご説明します。実際の進め方は、傷の状態によって変わる場合があります。

受付・問診
ご来院後、いつ・どのような状況で受傷したか、これまでの手当て、痛みの程度、既往歴、破傷風の予防接種歴などをうかがいます。受傷からの時間は、処置の方針を決めるうえで重要な情報です。

診察
医師が傷を直接診て、深さ・範囲・汚染の程度・異物の有無を確認します。やけどの場合は、深さの見極めが治療方針を左右します。

洗浄・処置
傷を十分に洗い、必要に応じて異物を取り除きます。この洗浄が、感染を防ぎ、跡を残さないうえで非常に重要な工程です。状態に応じて、縫合や、水ぶくれへの対応を行います。

被覆・保護
傷の状態に合った被覆材で覆い、乾かさない環境を保ちます。ご家庭での交換方法や、注意すべきサインをご説明します。

経過の確認
数日おきに再診し、治り方や感染の有無を確認しながら、処置の内容を調整していきます。治った後の跡についても、必要に応じてご相談いただけます。
熱傷・きり傷・すり傷の治療方法・選択肢
ここでは一般的な治療をご紹介します。どの方法が適しているかは、傷の種類・深さ・部位・受傷からの時間などに応じて、医師が一人ひとりの状態に合わせて検討します。
洗浄と異物の除去
傷の治療の出発点です。十分な量の水や生理食塩水で洗い流し、砂や小石などの異物を取り除きます。すり傷では、この工程を丁寧に行うことが、外傷性刺青を防ぐうえで欠かせません。必要に応じて局所麻酔を用いることがあります。
湿潤環境を保つ処置(被覆材)
傷の状態に応じた被覆材(ハイドロコロイド、ポリウレタンフォーム、非固着性ガーゼなど)を用い、適度な湿り気を保ちます。滲出液の量や感染の有無によって、適した材料は変わります。交換の頻度もあわせてご説明します。
外用薬
傷の状態に応じて、皮膚の再生を助ける軟膏や、感染を抑える薬を用いることがあります。やけどの深さや時期によって使い分けます。
縫合(きり傷)
傷口が開いている場合、局所麻酔のもとで縫い合わせます。受傷からの時間が経つほど感染の可能性が高まるため、早めの受診が望まれます。抜糸の時期は部位によって異なります。
水ぶくれへの対応(やけど)
水ぶくれをつぶすかどうかは、大きさ・部位・状態によって判断が異なります。小さいものはそのまま保護することが多く、大きいものや破れているものは、状態に応じて処置します。ご自身で無理につぶすことは避けてください。
内服薬
痛みが強い場合の鎮痛薬、感染が疑われる場合の抗菌薬などを用いることがあります。
破傷風の予防
土や錆びたものによる傷、深い刺し傷などでは、破傷風の予防が必要になることがあります。予防接種歴をふまえて判断し、必要な場合は対応をご説明します。
傷跡への対応
治った後の赤みや盛り上がりに対しては、保湿、紫外線対策、テープによる固定、外用薬などによる対応があります。状態によっては、より専門的な治療をご案内する場合もあります。医学的な必要性がなく、見た目を整えることを目的とした治療は、保険診療とは別のご案内(自費)となることがあります。詳しくは診察時にご説明します。
連携医療機関へのご紹介
広範囲のやけど、深いやけど(III度)、顔面や関節など機能に関わる部位の重度の受傷、腱や神経の損傷が疑われる場合、化学熱傷・電撃傷などについては、専門的な治療が必要です。これまで診療にあたってきた基幹病院をはじめとする連携医療機関へ、速やかにご紹介いたします。
ご家庭でのケア・応急処置
やけどの応急処置
すぐに冷やす
最も大切な初期対応です。流水(水道水)で15〜30分ほど冷やしてください。痛みがやわらぎ、深くなるのを抑えることが期待できます。
衣服の上からでもよい
衣類が張り付いている場合は、無理にはがさず、そのまま上から冷やしてください。
氷を直接当てない
氷や保冷剤を直接当てると、かえって組織を傷めることがあります。流水が基本です。
広範囲の場合は冷やしすぎに注意
とくにお子様や高齢の方では、体温が下がりすぎることがあります。広い範囲の場合は、冷やしながら早めに医療機関へ。
水ぶくれはつぶさない
自然の保護膜としてはたらきます。覆って受診してください。
民間療法は行わない
みそ、油、アロエなどを塗ることは、感染や診断の妨げになるため避けてください。
きり傷・すり傷の応急処置
まず水道水でよく洗う
砂や汚れを流水でしっかり洗い流します。すり傷では、ここが跡を残さないための最大のポイントです。
清潔なガーゼやタオルで押さえて止血
5分ほど、しっかり圧迫します。
乾かさないように覆う
絆創膏や被覆材で覆い、乾燥を防ぎます。かさぶたを無理に作らないほうが、治りも見た目も良くなることが多いとされています。
消毒液の多用は控える
傷を治そうとしている細胞まで傷めることがあります。洗浄が基本です。
治る過程でのケア
紫外線を避ける
治ったばかりの皮膚は、日焼けによって色素沈着を起こしやすい状態です。半年〜1年程度は、日焼け止めや衣類で保護しましょう。
保湿を続ける
新しい皮膚は乾燥しやすく、乾燥は跡が目立つ一因になります。
かかない、こすらない
治りかけはかゆくなることがありますが、かくと治りが遅れます。
気になるサインがあれば受診を
赤み・腫れ・痛みが強くなる、膿が出る、発熱するといった場合は、感染の可能性があります。早めにご相談ください。
よくある質問
Q. やけどをしたら、どのくらい冷やせばよいですか?
-
A. 流水で15〜30分ほどが目安です。痛みがやわらぐまで冷やしてください。ただし、広範囲のやけどや、お子様・高齢の方では体温が下がりすぎることがあるため、冷やしながら早めに医療機関へお越しください。
Q. 水ぶくれはつぶしたほうがよいですか?
-
A. ご自身でつぶすことはおすすめしません。水ぶくれの膜は、傷を保護する役割を果たしています。大きさや部位によって対応が異なりますので、つぶさず覆ったうえで受診してください。
Q. 傷は消毒したほうがよいですか?
-
A. 現在は、十分な洗浄を基本とし、消毒液の多用は避ける考え方が一般的です。消毒液は細菌だけでなく、傷を治そうとする細胞にも影響することがあるためです。汚染の程度によって判断が異なりますので、ご相談ください。
Q. かさぶたは作ったほうがよいのでは?
-
A. かつてはそう考えられていましたが、現在は、適度な湿り気を保ったほうが皮膚の再生が進みやすく、跡も目立ちにくいとされています。傷の種類によって適切な方法は異なりますので、判断に迷う場合はご相談ください。
Q. 治療には保険が使えますか?
-
A. やけどや外傷の診断・処置は保険診療の対象です。一方、医学的な必要性がなく、見た目を整えることを目的とした傷跡の治療は、保険診療とは別のご案内(自費)となることがあります。費用について気になる点は、診察時にお尋ねください。
Q. 跡は残りますか?
-
A. 深さと部位、治り方によって異なります。浅いやけどやすり傷では跡が残りにくい一方、深いものでは残ることがあります。適切な処置と、治った後の紫外線対策・保湿が、跡を目立たせないうえで役立ちます。
Q. 子どものやけども診てもらえますか?
-
A. はい。お子様は皮膚が薄く、同じ条件でも深いやけどになりやすいとされています。処置の際は、お子様の負担にも配慮しながら進めます。院内にはキッズコーナーも設けています。
Q. 縫ったほうがよいか分かりません。
-
A. 傷口が開いている、深い、出血が止まりにくいといった場合は、縫合が必要なことがあります。時間が経つほど縫合が難しくなりますので、迷われたら早めにご相談ください。
Q. 何日おきに通院が必要ですか?
-
A. 傷の状態によりますが、数日おきの処置が必要になることが多くあります。経過を見ながら間隔を調整していきます。
院長から患者様へ
皮膚は、体の状態を映す鏡だと、私は考えています。同時に、皮膚は体を守る壁でもあります。その壁が破れたとき、どう手当てするかで、その後の何か月、何年かが変わってきます。
私は基幹病院での勤務のなかで、外傷や皮膚外科の診療にも携わってきました。そこで実感したのは、最初の処置がその後を大きく左右するということです。とくに、すり傷に入り込んだ砂を丁寧に洗い流すこと、やけどの深さを見誤らないこと、乾かさない環境を保つこと。地味ですが、これらが跡の残り方を決めます。
そしてもうひとつ、傷は「治れば終わり」ではないということも、お伝えしたいと思っています。治ったばかりの皮膚は、日焼けしやすく、乾燥しやすく、赤みが残りやすい状態です。その後の数か月をどう過ごすかで、見た目が変わってきます。当院では、治すところまでではなく、その後のケアまでご一緒に考えていきたいと思っています。
私自身、患者様のお話をしっかりうかがい、分かりやすくご説明し、納得していただいたうえで治療を進めることを信条としています。また、当院で対応すべきことと、より専門的な医療機関にお願いすべきことを見極めることも、私の責任だと考えています。「このくらいで受診してよいのだろうか」と迷われる程度の傷こそ、一度お見せいただければと思います。皮膚のことだけでなく、体全体の健康と美しさのかかりつけ医として、地域の皆さまにご利用いただけるクリニックでありたいと願っています。
川名ごとう皮フ科クリニック 院長 後藤 克修
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